掲載記録


2003 fit2月号


はっぴーらいふ 
−この人に聞くーL


妖しげで不思議な人形の世界
           
        創作人形作家&舞踊家  伽井丹彌さん

 一度伽井さんの人形に出会った人は、人形たちのその魅力的であやしげな目力に心を奪われることでしょう。幼いころ、祖母から譲り受けた一体の市松人形がきっかけとなり、人形作りに興味を持った伽井さん。一人っ子であったことも手伝って、人形遊びに熱中する子供時代だったそうです。身近にある材料を使って人形を作ってしまったのがなんと幼稚園時代。伽井オリジナルドール第1号です。
 伽井さんの作る人形は球体関節人形というジャンルの人形で、子供の玩具としてではなくアート的な要素の強いもので、日本では今から約25年前に第1次ブームを巻き起こしました。
 ドイツのシュールレアリストであったハンス・ベルメールという作家の影響を受けたのがきっかけとなり、幼少期から思い続けた人形作りへの道を進みました。この世界では有名な人形作家四谷シモンの主宰する「エコール、ド、シモン」へ入学したのが、今から18年前のことです。
 『通常2年の所を毎日通い半年で学び、帯広に戻りました。教室で学んだ基礎を元に独学でオリジナル作品作りに没頭した毎日でした。』と伽井さん。
 1987年には「第3回人形たち展」入選。これをきっかけに、個展などで多くの人に創作人形作家伽井丹彌の名が広まり始めました。1991年には念願の人形教室を開設され、今では約20名の生徒さんに囲まれ、毎年人形教室展で多くの人々の目を楽しませてくれています。
 伽井さんの作る人形のテーマは「妖しさ」。従来の人形が童女や幼女のテーマが多い中、少女だけれど胸のふくらみを帯びた、少女と女の狭間の大人っぽさをかもし出した雰囲気を持っているものが多いようです。『最近の作品は黒髪に赤い口紅といった日本を意識した人形が多いですね。』あくまで日本にこだわる伽井ドールは、おばあ様の市松人形が根底にあるのでしょうか。
 『球体関節人形の魅力は自在にポーズが変えられるという事。少しでも人間の動きに近づけるよう意識しています。人形を自分に置き換えてみたり、自分を人形化する事もあります。』
 伽井さんには創作舞踊家というもう一つの顔があることも関係しているようです。
 今から23年前に松本道子モダンダンスの門を叩き、松本先生のもとで今でもレッスンを受ける日々。踊るだけではなくその空間作りも手がけてみたいということから、自ら演出、出演する舞台に取り組み始めました。昨年のとかち国際アートデメーテルでは「ほこら」というダンスパフォーマンスを企画、実演し伽井さんのダンスの世界を披露しました。
『私の踊りのテーマは常に「人形」。そして「虚像」と「実像」です。』と伽井さん。
 伽井さんは、人形もダンスも自分を表現する大切な表現方法といいます。人形も踊る自分も虚像であり、実像を通して目には見えないものを感じ取って欲しいのだそうです。
又、伽井さんのなかで人形は『静』踊りは『動』の部分として絶妙なバランスをとっているとのことでした。
 『最近は球体関節人形の第2ブームがきているように感じます。新たな20代のファンが増えていますね。』フィギア世代の20代〜30代の方々が、球体関節人形の世界に融合しているようです。
『常に新しい素材に挑戦しながらも自分の世界を構築して行きたいです。』独特な伽井さんの世界への追求はこれからも深まっていきそうです。
 取材日には、素敵な着物姿であらわれた伽井さんのそのオーラは言葉では言い表せないほどのものを感じました。伽井丹彌さんは、まさに人形のような透明感がある女性でした。
 あやしげで不思議な空間を作り出す演出家であり、舞踊家であり、人形作家の伽井さん。
そんな彼女から、ますます目が離せません。




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