掲載記録


2001 月刊しゅん4月号

©月刊しゅん

季節の彩り

日本古来の人形作りの技法を一部に取り入れつつ、独自の視点と技法で球体間接人形を創作。伽井丹彌さんにとって人形作りは仕事であり、自分探しの手段でもあります。

 伽井さんの作る人形は空気感に満ちています。他者の目を通して生きることに慣れているはずの女性の中に潜む、もうひとりの自分。生身の自分を対象化しつつ人形作りに深く深く身を寄せることで自分を突き抜け、自由の彼岸ともいうべき宇宙の暗闇にフワリと存在を浮かび上がらせ、もう一度人形作りをしている自分を見つめているかのような。長い間モダンダンスの世界に身を置き、ソロを踊る中で続けてきた自分探し。そうしてたどり着いた人形作りは、伽井さんにとって自分探しの旅そのものなのかもしれません。
 腰、肩、腕、脚、そして手、足の指一本一本。伽井さんの作る球体関節の人形は関節を軸に自在に動き、さまざまなポーズをつけることができます。ドイツのハンス・ベルメール、日本いえば伽井さんも半年ほど師事したことのある人形作家四谷シモンなどに球体関節の人形をみることができますが、伽井さんの作る関節人形は独特です。細部に渡って人間の形・ありようをたどりながら、ベクトルは逆へ逆へと動き、希薄すぎる存在感だけが際だってくるような…。
 およそ10年前、伽井さんは帯広市で初の人形の個展を開催。そのころ同時に人形教室を始めています。「人形作りを仕事にしていることの証」としての教室。そこを基軸にして生まれてくるに違いない未来の人形たちを心待ちにしたいと思います。



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