この世にはない究極の美と官能で人を惑わせる。 まだ、少女の域を脱しているかいないかというあどけない表情から異様なエロティシズムを放つ。着物がはだけた胸元には、完全には熟していない胸の膨らみが隠されており、危険な官能を創造せずにはいられない。 |
|
今にも動き出して、人間を誘惑しそうなほどの妖しさを放つ。 帯広出身の伽井さんのアトリエは、帯広市内の閑静な住宅街の一角にある。彼女が作った人形を展示している部屋に案内してもらった。 |
|
芸術の域にまで達するエロティシズム 伽井さんは、高校生のころ寺山修司の詩に傾倒し、彼の作品に登場するような怪しげな人形に惹かれ、人形の観念性に興味を持ったのだという。その後、球体関節人形という関節を動かせる人形作りの分野では、日本の第一人者である四谷シモン氏の主宰する人形教室で基礎を学び、独学で人形を作り始めた。 「人形は、生と死の両方を持ち合わせているものだと思う。ただのモノなく限りなく人間に近いモノとして、目に見えない感情や気配を感じさせるような、そんな人形を追求していこうと」。 人形一体を作るのに、半年以上の歳月を要するのだという。陶器のような皮膚感を出すために、ひたすら磨き何度も重ね塗りをする。瞳も市販のではなく手作りするなど、彼女のこだわりは細部にわたっている。睫毛も一本一本ピンセットで埋め込み、髪の毛も時には人毛を使用するとのことだ。 彼女の人形にはエロティックという表現をかかすことはできないだろう。前途のように血管や爪、歯、そして性器、というように普段は隠れている部分を、人形にも与えているからこそなのかもしれない。 「こういう細かな部分の、象徴性を大事にしたい。でも、たとえば人体模型のようなリアル性を求めているわけではなく、私個人の『人形』としてのリアルさみたいなものでしょうか」。 彫刻でもなく、玩具でもない。 新たな芸術の分野を意識してしているかのような伽井さん。作っている過程で、自身の感性を人形という作品に投影させ、その人形を見た者は心が揺れ動き感動さえ覚える。そこに感じられるエロティシズムは、高い芸術性を含んでいると言えるだろう。 |