掲載記録


1990 トーク・バザール7月号

 伽井さんが心ひかれる人形に出会ったのは、高校卒業の記念旅行の時。手作りの人形があることに驚き、喜び、それが人形作家へのきっかけとなったのです。
 「雑誌で見た四谷シモンの人形学校開校の記事を覚えていて、思い切って通う事にしましたが、学校といってもカルチャースクールのような気長なもの。帯広から出て行って時間に余裕があったわけではありません」
 通常2年のところ、頼みこんで毎日通い、半年で基礎を叩き込み、帯広での創作にもどりました。
 「あとは独学。いざ造ろうと思ってもうまくゆかず、造っては壊しの繰り返しでした。私自身はオーソドックスな人形よりもデフォルメされた作品としての人形が好きなんです」
 伽井さんの人形は球体関節人形といって、首、肩、肘、膝が人間と同じように動きます。それだけ表情も豊になり、何も言わなくても気持ちが通じる分身のような感じさえします。その神秘的な笑顔の美しさは心が汚れてしまっている大人には、もう憧れになってしまいました。
 「造っているうちにイメージが一人歩きすることもあって、確固としたイメージがないと造れません。顔が一番むずかしいですね。気づいたら夜があけていることも」
 来年は東京と京都での個展が決定し、10体ほど出品の予定。そのために、今年は全精力をかたむけて創作活動に励みます。
 「個展が終わってほっとしたら、人形を造る教室を持ちたいですね。それから、音やビジュアルの創作も手掛けて行きたい」
 何もないところから生命が誕生するように、伽井さんの手によって不思議な空間が生まれそうです。



BACK


inserted by FC2 system