掲載記録


1989 コミュニティアイ10月号

「人形に興味を持ったきっかけは、私のおばぁちゃんが若い頃母が生まれると同時に買ったというこの人形を見てからなんです」と伽井さんが見せてくれた人形は一目で古くから大切に扱われてきたとわかる市松人形だった。
 女の子ならみんな幼い頃人形と遊んだ記憶があると思う、伽井さんもその中の一人だった。遊んでいるだけでは飽き足らず幼稚園の頃、あまりぎれにテープやマジックを使い、自分だけのお人形を作って楽しんでいたそうだ。「ひとりっ子だったせいもあるけど小さい頃から自分なりに工夫してお人形を作っていました。もうほとんどは捨ててしまったり、無くしてしまったりしてないんですが、幼稚園の頃作ったものが一つだけ残っているんです」何とかそのお人形を見せてほしいと頼んだが、恥ずかしいから・・・と、残念ながら見せてもらう事は出来なかった。
 そんな思いが彼女を人形製作の道に乗せ、この世界では有名な四谷シモンの人形学校「エコール・ド・シモン」へ入学。そこから本格的に、彼女と人形のドラマが始まることとなる。
 いまにも動きだしそうな瞳を持つ彼女の人形たちは、2年前「第3回人形たち展 全国公募」で入選したこともあり、去年の11月、市内西2条の「ギャルリーシノカワ」にて「精霊(プシュケ)の系譜」と銘打った個展も行われ市民の目を楽しませた。人間は命のある代わり生きていられる期間は限られているが、人形は命の無い代わりいつまでも形のまま存在しつづけることができる。「今、私が作っている人形もいつかは、アンティーク人形になっちゃうんですよ。そう考えると楽しくなるでしょ」と伽井さんは笑顔で語った。そんな彼女の夢は市内に創作人形教室を作ること。「人形好きの人達が集うサロンのような教室みたいなのを作りたいですね、あとビデオで今までの作品を使って動きのある人形のドラマも作ってみたいし・・・等身大の人形の製作も考えているんですけど、やりたいことがたくさんありすぎて(笑)だから少しずつ前に進めるといいんですけど」
 京都に宝鏡寺という人形の寺がある、そこには、女の子たちが今まで大事にしてきた人形とサヨウナラをするときに持って行く人形塚がある。伽井さんがそこで見つけ、いまだに忘れられないという詩をここで紹介しよう。

人形よ、誰がつくりしか
  誰に愛されしか、知らねども
       愛された事実こそ
汝の成仏誠なれ。



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